karajanjanの日記

カラヤンについて語りましょう

ブルックナー比較 ♪第7番♪

BPOとVPOの演奏

 

 カラヤンブルックナーを自分のレパートリーの中心にしていたと思います。ベルリン・フィルとの全集も有名ですし、晩年に残したウィーン・フィルとの録音もブルックナーでした。ただし、1番~6番までは演奏頻度は高くなかったようで、1番、2番、3番、6番は録音だけで、演奏会では取り上げた記録がありません。カラヤンが得意としたのはやはり7番、8番、9番の3曲ですね。録音、映像作品も複数残されています。この3曲はうれしいことに、BPOとVPO2つのオケで録音が残されています。皆さんはどちらのオケとの演奏がお好みでしょうか?

 演奏の比較となると、様々なブログで「○○の方が精神性がない」や「△△でなければならない」といったコメントが見受けられますが、ここではあくまで好みを述べたり、語り合う場にしたいと思います。なぜなら、私自身が本当のベートーヴェンモーツァルト、今回取り上げるブルックナーの本質を理解している、あるいは知っているわけではないからです。芸術作品にはよくある話ですが、存命中は見向きもされなかった作品が後世になり評価される。果たして後世の人がその作品を本当に理解した結果、有名になったのか、作者の意図とは別のところで評価され有名になったのかは分かりませんよね。文学作品でも「そんな意図で書いたのではないけれど、勝手な想像で有名になった」なんて例はいくつもありますからね。

 というわけで、今回は7番を取り上げたいと思います。

 

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 私が所有しているCDはこの2点です。この他にもライブ録音されて売られているCD-Rや You Tube でアップされている演奏もあるようですが、あくまで正規版で聴き比べてみました。

 実は、どちらが好みかと言われると、はっきりと決めることはできません。どちらも味があると言いましょうか・・・。世の中ではVPO版の評価が高いかもしれません。カラヤン白鳥の歌となったこの演奏。それだけでも聴き手にとってはプラスに作用するかもしれません。VPOの温かみのあるサウンドも素晴らしいと思います。しかし、そういった事前の情報や知識を捨て去り(捨て去るのは至難の業ですが)いざ、曲を聴いてみると、私にはVPO版の冒頭がやや速く感じられます。事前の情報を捨て去ると言いましたが、私自身、カラヤンの7番を初めて聴いたのはこのVPO版でした。(30年くらい前の話です)当時は、この演奏がとても気に入っており、聴くたびに酔いしれていました。それから10年以上経ったでしょうか、ふとBPO版のCDを手に入れ、聴いてみたところ、出だしのテンポ感が違うように感じました。オケが違うというよりも旋律に込められた何かが違う気がして。BPO版は「原点版」、VPO版が「ハース版」と版の違いも全体としては違いに影響するかもしれませんが冒頭の数小節ですごい違いを感じてしまいました。という昔からの思いを一度拭い去っても、やはり冒頭のテンポ感はBPOの方が好きです。1楽章最後のコーダも個人的にBPO版の方が荘厳さを感じます。音は確かにVPOより鋭く耳に飛び込んで来る気がしますが、音の輪郭がはっきりと聞き取れ、トランペットの音が遠くまで響き渡ります。VPO版は輪郭がぼやけると言いますか、よく言うと音が全体的にブレンドしてしまいフワッとした感じで終わってしまう気がするんです。というわけで、1楽章はBPOの演奏が好みです。

 2楽章は逆に音のブレンド、温かさから、VPO版がいいと思います。テンポはBPO版よりも若干遅く、それがワーグナーの死を悼む空気を醸し出しているように思います。音がえぐられて下から聴こえてくる演奏です。ここはBPO版では音の輪郭ははっきりとしていますが、ちょっとストレートに飛んでくる感じで一溜め欲しいかな?と思います。十分心に染みる演奏ですが、ここはVPOの全体を包み込むようなオルガンサウンドに軍配を上げたいと思います。

 3楽章は甲乙つけがたい演奏です。BPOの方がスピーディー(実際30秒の差)で心地よく流れていきます。2楽章がたっぷりした分、3楽章で前に行くことを考えるとBPOの演奏の方がすっと聴けるような気がしますが、しっかりと耳を澄ますと、コントラバスをはじめとする低音部隊の細かい動きがしっかりと聴こえてきます。VPOよりレガート感は強いように思います。レガートでメロディーが流れつつも、低音のしっかりとした細かい動きがあいまって、構造美が際立った演奏に感じました。中間部はVPOの方がよりゆったりと(レガートとという意味ではなく)流れています。クラマックスのトランペットの下降音型はこちらのほうがよりたっぷり、感情がこもった感じです。

 4楽章もBPOの方がスマートですが、決して速くは聴こえません。やはり低音がしっかりとテンポを刻んでおり、安定感があります。音も全体を通してくっきりと聴こえてきます。金管が吠える場面でも、非常にバランスよく響きがすっきり(決して軽いわけではないと思います)しています。VPO版はややトランペットが前面に出過ぎる響きがあるように感じます。悪く言うとちょっとキンキンしてサウンドが散っている印象を受けます。それを爆演ととってプラスで考えるかは本当にその人の好みになると思います。ホルンのサウンドBPOの方が低音の含みが感じられます。ただ、VPO版の方が全体としては落ち着いていて必死に聴くというより、敬虔な気持ちで聴くことができるのではないかと思います。

 実は、4楽章に関しては1つエピソードがあります。今回取り上げたVPOの演奏はカラヤン・ゴールドのCDですが、このCDを所有する前は、通常のドイツグラムフォンの黄色帯のCDを聴いていました。そのCDでは4楽章のテイクが12分台だったのですが、このゴールドCDだと13分なのです。疑問に思い、販売元のポリドールに問い合わせしたところ、使ったテイクを変えて編集したので4楽章の時間が変わってしまったとのことでした。このことは、カラヤンの情報では恐らくNO.1であった

Herbert von Karajan dirigiert Anton Bruckner

のサイト内でも記事を投稿させてもらいましたが、残念ながら管理人さんがお亡くなりになり、一部は閲覧可能ですが、色々とやり取りをさせて頂いたBBSは見られなくなってしまいました。当時、お話をさせた頂い方々、本当にありがとうございました。この場を借りて、御礼申し上げます。管理人さんも本当に良い方でした。ありがとうございました。

 というわけで、とりとめもない7番の聴き比べレポートでしたがいかがでしたか?

トータルで考えると、私はBPOとの7番の方が好みのようです。これはあくまで私見です。聴く機械、スピーカー、その時の気分や体調でも全く違う音楽に聴こえてしまうと思います。皆さんは私のレポートなど気にすることなく、自由に7番とお付き合い下さいね♪

(1つ残念なのは7番に関しては映像作品が残されなかったことです。8番、9番はあるのに、なぜ7番は残さなかったのかとても疑問です。晩年、VPOと8番は録音及び映像作品を残しました。しかし7番は録音だけ。もともと録音のセッションしか予定していなかったようです。本当はシューベルトの未完成交響曲もレコーディング予定だったそうですが、7番に時間をかけすぎてできなかったと何かで読んだ記憶があります。それにしても、その時に映像も残してもらいたかった・・・。)

 次回は8番を比較したいと思います。