karajanjanの日記

カラヤンについて語りましょう

2025年ウィーン・フィル ニューイヤーコンサート

皆様、明けましておめでとうございます。

本年もよろしくお願い致します♫

今のところ、比較的落ち着いた年明けでホッとしております。

さて、1月1日は恒例、ウィーン・フィルニューイヤーコンサートをテレビでゆっくり鑑賞しました。特に今回指揮を務めたのが、現役指揮者で私の最もお気に入りのイタリアのマエストロ、リッカルド・ムーティでした。もう83歳ですが、かくしゃくとしていて、とても80歳を超えているとは思えない指揮ぶりでした。現役最高齢指揮者と言えば、昨今取り上げられることの多い、ヘルベルト・ブロムシュテットですが、ブロムシュテットは転倒して足を骨折して以来、歩行がちょっと難しくなったようで、ここ数年は椅子に座っての指揮になっていますね。まあ、座って指揮をすることがいけないわけでも何でもないのですが、時には飛び跳ねるように指揮をしていたムーティは本当に元気だなぁと思いました。80歳前後の指揮者はだいぶ座って指揮をしていましたからね。カラヤンもご存知の通り、立っているように見えますが、指揮台にサドルがあり、それに腰かけて振っていることが多かったようです。他にはオットー・クレンペラーも、カール・ベームもそれにセルジュ・チェリビダッケも座っての指揮でしたね。

              

さて、今回のニューイヤーコンサート、パッと映像を見て、だいぶ団員が入れ替わったという印象を受けました。女性団員がかなり増えましたね。ただ、音が時より昔ながらのウィーン・フィルのハーモニーではなく感じました。これは主観かもしれません。個人的に感じたことは、全体で鳴らした音はそれほど今までの音とは変わらないかなぁと思ったのですが、少し音が薄くなったり、高音域になると、ウィーン・フィルのかつての艶やかさがなかったような気がします。特に木管のピッチがいまいちだった箇所があったように思います。もしかすると若い団員が多くなったことで起きた現象かもしれませんね。番組中の楽団長へのインタビューの際、「ムーティが50年にわたってウィーン・フィルとの関係を続け、若かりし時はウィーン・フィルから伝統を学んだ。今はムーティが団員にかつてのウィーン・フィルのことや伝統を教えている」といった趣旨の発言をしていましたが、伝統を継承している最中の音なのかもしれませんね。

こんなことを言いましたが、全体の音楽はとても楽しく、素晴らしかったと思います。特に小さいピアノの音は昔と変わらず絶品でした。今回、ムーティは小さい音にものすごく意識を向けて指揮をしていたように思います。その思いにウィーン・フィルがよく応えていたのではないでしょうか。

今回は一曲ごとの感想ではなく、全体的な感想を綴っていきたいと思います。

ムーティの前回の登場が2021年、まさにコロナ禍で、史上初の無観客でのニューイヤーコンサートでした。そんな大変な中、素晴らしい演奏を届けてくれたと思いましたが、やはり熱の入れようが違うと言いましょうか、今回、満員の会場、割れんばかりの拍手で迎えられ、ムーティのやる気も違ったのではないでないでしょうか。

今回のプログラムはやはり第2部が充実していたように思いました。2部の1曲目は喜歌劇「ジプシー男爵」序曲。かつてカラヤンクライバーニューイヤーコンサートで取り上げた曲です。この曲に限ったことではないのですが、今回のムーティのテンポは比較的ゆったり目のものが多かった気がします。もう少し速いテンポでもいいかな?と思うものもありましたが、ムーティの落ち着きと細やかな曲作りが感じられて、まぁそんなテンポもありかなと思いました。なので、重厚な「ジプシー男爵」ではありましたが、団員はとても楽しそうに演奏していました。木管に対して、曲中色々と指示を出して観ていて面白い演奏になってました。

4曲目が今回注目の初の女性作曲家の作品が取り上げられました。コンスタンツェ・ガイガーの「フェルディナンドゥス・ワルツ」です。私も初めてこの曲を聴きましたが、なかなか響きが面白い曲だと思いました。やはりシュトラス一家とは違う響きだったと思います。シュトラス一家の音楽の方が根っから明るい感じがします。ガイガーの曲はいい意味で渋い響き。普通のコンサートで取り上げても十分聴きごたえのある曲だと思いました。残されたピアノ譜からオーケストレーションしたとのことですが、実に洗練された編曲だったと思います。ムーティの指揮も他の曲より丁寧に振っていたようにも感じられました。シュトラス一家の作品であれば、ウィーン・フィルに完全に任せてしまうことも可能でしょう。しかし、この曲はお互いにとって初の曲であるため、他の作品とは少し意識を変えたのかもしれませんね。先程、「初の女性作曲家の作品」という言い方をしましたが、番組中、ゲストの夏木マリさんが実に言い得て妙なことを仰っていました。「女性の作品を選んだのではなく、選ばれた作品を作曲した人がたまたま女性であっただけ」なんとなく納得してしまいました。もちろん、楽団には「男女平等がうたわれる時代になったので、今まで取り上げられていない女性の作品を」という思いはあったと思います。しかし、コンサートにふさわしい、他の曲ともプログラム的にバランスのとれる曲を色々と検討した結果、彼女の曲がたまたま選ばれたのかもしれませんね。

最後の3曲はお馴染みの曲が並びました。

全てヨハン・シュトラウス2世の作品です。「アンネン・ポルカ」、「トリッチ・トラッチポルカ」、そして最後はワルツ「酒・女・歌」。聴けば「あ!」と思う曲ばかり。ヨハン・シュトラウス2世生誕200年のアニバーサリーにふさわしい選曲でした。

「アンネン・ポルカ」はカラヤンも取り上げた曲でとても懐かしく感じられました。指揮もかなりリラックスした感じで、いい意味で遊びながら指揮をしている感じでした。普段はしないようなライトな指揮ぶりだったと思います。

最後のワルツ、これは絶品でした。今回ワルツは何曲かあったのですが、共通点としては、ウィーンなまり(「なまり」と言うのは失礼かもしれませんね。本場のワルツなんですから)が強調されていたこと。最近のニューイヤーコンサートのワルツは比較的ウィーンなまりがそれほど強くないものが多かった気がします。フランツ・ウェザール・メストは強調して演奏していた記憶がありますが、今回のムーティは、最初の方で述べた、ウィーンの伝統を楽団員に教え込むことを意識的にやっていたのではないかと思います。こんなにウィーン風の2拍目が速く飛び込み、3拍目がやや遅れるワルツは聴いたことがありません。フレーズの最初の数小節、かなりウィーン・フィルをコントロールし、流れができたところで大きく1拍で流していくという場面が多くみられたように思います。今まで6回、ニューイヤーコンサートを指揮してきたムーティですが、これまではこんなに主体的にワルツのリズムを刻もうとしたことはなかったのではないかと思います。ムーティなり何か思いがあったことでしょう。

当然、アンコールのワルツ「美しく青きドナウ」も同様にウィーンなまりのゆったりとして素晴らしい演奏でした。そして、演奏会の最後を飾る、「ラデツキー行進曲」ですが、これは今までにない解釈で演奏されました。実は、ムーティニューイヤーコンサートのたびにこだわる部分を毎回変えてくるんです。例えば、「美しく青きドナウ」のクラリネットのトリルを強調する年があったり、「ラデツキー行進曲」のトリオがもりあがったバスドラム(大太鼓)を強調してみたり(そのことが伝わるよう、テレビでもバスドラムがアップで映し出されていました)、同じ部分のホルンを強調する年があったりと、なにかしら聴かせどころを作ってくれていました。今回はフレーズの最後をわざとらしく強調するケースが多かったのが特徴だと思っています。特に顕著だったのが、最後のラデツキー行進曲」です。威勢よく、有名な「タタタン タタタン タッタッ タータタン(ウン)タッタン」で始まりますが、それほど威勢よく始めなかったんです。少し「あれ?」と思っていると、休符(ウン)のあとの「タッタン」の直前に大きく振りかぶって、「タッタン」を大胆に強調していました。その時のムーティはちょっとどや顔っぽい感じがしていて「面白い解釈だろ?」とでも言わんばかりの表情でした。特に冒頭に戻った際はピアノで「タタタン タタタン~」と演奏をし、1回目よりも大音量で「タッタン」を演奏。曲の最後は観客にコンサートマスターを見ているように指示を出すような指揮をして、最後の音で飛び跳ねるような仕草をしてコンサートを締め括りました。実に変わった、でも面白く、素晴らしい演奏会だったと思います。「ラデツキー行進曲」終了後、すぐさま観客は総立ち状態でしたから、観客もとても満足したものだったのでしょう。今回は小さい音、そしてフレーズの最後の強調、そしてウィーンなまりの強調がマエストロ・ムーティの仕掛けだったように感じました。

というわけで、完全主観の今年のウィーン・フィル ニューイヤーコンサートのレポートでした。まだお聴きでない方は、私の記事にとらわれずにお聴きくださいね!

コンサートの感想など、是非コメントへお願いします♫