前回取り上げた「ボレロ」を含む、リッカルド・ムーティ指揮のウィーン・フィル創立150周年記念コンサートのCDを全て聴き終えました♫
改めてCDはこちらです。
この演奏会のプログラムは
(メゾ・ソプラノ:クリスタ・ルートヴィヒ)
3.ベートーヴェン:序曲「コリオラン」
5.ラベル:「ボレロ」
です。
では、1曲目から聴いた感想を綴っていきたいと思います。
1.未完成交響曲
ムーティのシューベルトは個人的に好きです。評論家のムーティ&ウィーン・フィルの交響曲全集の評価はいま一つのようですが、堂々としていて、変な細工がなく落ち着いて聴けると思います。そんなイメージも持って聴き始めたのですが、ライヴ録音ということもあるでしょうが、テンポがいつもよりも速めのような気がします。ちょっとせせこましいという印象を受けました。1990年のセッションでの演奏の方がゆったりとしていて丁寧だと思います。バランスも金管とティンパニが少し強め(これは未完成交響曲に限ったことではなかったので、エンジニアやムーティの好みかもしれません)のような気がします。まあ、150周年記念コンサートの1曲目ということもあり、指揮者、オケともにいつもよりも意気込んでいた可能性はありますね。次第に落ち着きを取り戻したのか、2楽章は安心して聴くことができました。2楽章のテンポはセッションとほほ同じくらい。それでも若干こちらのコンサートでの演奏の方が早く感じられるかもしれませんね。
2.リュッケルトの詩による5つの歌曲
私の中で、ムーティはあまりマーラーを取り上げる指揮者ではないというイメージがあります。普通に手に入るのはCDではフィラデルフィア管弦楽団との1番「巨人」だけではないでしょうか。そういう意味では貴重なマーラーだと思いますが、この曲は歌手がメインなので、指揮者のウエイトはそう高くはないかもしれませんね(もちろん指揮者の支えが駄目であればいくら歌手がよくてもNGですが)。
この演奏は、非常にソリストに寄り添った演奏だと思います。ソリストのルートヴィヒはさすがです。無理のない安定した歌声を聴かせてくれます。ルートヴィヒはこの曲を1974年にカラヤンと録音しています。そのCDがこちらです。
この録音のルートヴィヒも素晴らしいのですが、今回のコンサートとでは約20年の違いがあります。1曲1曲の演奏時間はそれほど変わりません。しかしながら、カラヤンとの録音の時の方が声が太いですね。重心がしっかりとしている落ち着いた歌曲に仕上がっています。さらにカラヤンはよりオケを小さくし、ルートヴィヒを支えている、そんな印象を受けました。それに比べるとムーティの伴奏はカラヤンよりは大きいですが、決してルートヴィヒの声を消してしまうようなことはありません。このコンサートでのルートヴィヒはカラヤン盤よりも声質がいい意味で軽くなり、余裕を持って歌えている、そんな感じがします。その余裕をムーティにも向け、非常に透明感があり、なおかつ温かみのある演奏になっている気がしました。
ちなみにこの5つの歌曲、演奏の順番は特に決まっていないようです。今回のムーティ盤とカラヤン盤でもだいぶ順番が違います。バーンスタインも2人とは違う順番で歌わせている。指揮者が歌詞の構成を考えて、また、音楽の構成も考え合わせて決定しているようです。
3.コリオラン序曲
個人的にこのコンサートの中で1番の出来はこのベートーヴェンだと思いました。解説の中でもこの言葉が出てきたのですが、私も聴いてすぐにそう感じました。とても「男性的」な演奏なんです。昨今、ジェンダーレスと言われていますが、変な差別的な意味合いではなく、骨太のどっしりとした音が冒頭から耳に飛び込んできます。バランスも素晴らしい。音の最後まで神経が行き届いている、そんな気がします。おそらくムーティはこぶしを握って、ウィーン・フィルと対峙しているのでしょう。ウィーン・フィルもそれに応えた熱演だと思います。
また違う記事で述べたいと思っていますが、名指揮者であっても、ウィーン・フィルとベートーヴェンやブラームスの曲を演奏すると、「この作曲家はこんなに軽い音だった?」と思うことが多々あります。なので、個人的にはベートーヴェンやブラームスはベルリン・フィルでの演奏を好んで聴いてしまう私ですが、このコリオラン序曲は文句なしです!音も適度に重たく、音の出だしも弦がある程度、ためを作ってズシーンと出てくれる。響きも綺麗。テンポ感も颯爽としていて心地いいです。私の中では今までのコリオラン序曲の中ではベストでは!と思っています。騙されたと思って、聴いてみてください♪
4.交響曲第4番「イタリア」
イタリア人、ムーティにぴったりの曲ですね。コリオラン序曲の勢いそのままに曲に突入した感じです。NHKで観た映像と重ね合わせてみると、確か、冒頭からムーティは4拍子を振り続けていたように記憶しています。譜面は確かに4拍子で書かれているのですが、メロディーの流れを考えて2拍子で振る方も多いのではないでしょうか。または4拍子と2拍子を交えているパターンもありますね。冒頭の木管楽器の3連符の1小節「タタタ・タタタ・タタタ・タタタ」を4拍子、そのあとの「タリーラン・タリーラン・タリー・ラリラー」の部分から2拍子でしょうか(アバドがベルリン・フィルとこの曲をやった際はこのように振っていたように記憶しています)。しかし、このコンサートのムーティは4拍子でグイグイとウィーン・フィルを引っ張ります。陽気なイタリア人というよりは熱血イタリア人といった雰囲気でしょうか。未完成交響曲の時に述べましたが、若干金管とティンパニが大きい時があるような気がしますが、豪快かつ爽快な演奏だと思います。この演奏も全楽章通して骨太な演奏ですね。ですが決して重たくはありません。むしろ細かい音は鮮明に聴こえます。かなり管楽器のタンギングやアーティキュレーションを意識させているのでしょう。イタリア語が細かい音まで鮮明に聴きとれる、そんな感じです。2楽章は人によっては少し重たく感じられるかもしれません。音は適度なレガートで響きは綺麗です。ムーティのレガートはカラヤンのレガートとは違い、粘り過ぎる、わざとらしいといった感じは受けないと思いますよ。3楽章はとても軽快です。金管ファンファーレも力むことなくちょっ余裕がありおしゃれな香りがします。4楽章は1楽章同様細かい音がしっかりと聴きとれ、重心もしっかりとした演奏です。もしかするとムーティよりもウィーン・フィルの方が興奮して前のめりに演奏しようとしているかもしれません。それをムーティががっしりと抑えている。そんな音圧のあるイタリアでした。
そして最後の「ボレロ」へというコンサートです。
いかがでしたでしょうか?ざっと私の感想を述べさせていただきました。人それぞれ楽しみ方は違うので、私と全然違う!と思う方もいると思います。もし、このコンサートの映像やCDを観たり聴いたりする機会がある方は、この記事にこだわることなくお楽しみくださいね。