karajanjanの日記

カラヤンについて語りましょう

「運命」の最後の音

多くの人が耳にするベートーヴェン交響曲第5番「運命」。クラシックの導入としてよく選ばれる曲ですよね。小学校や中学校の音楽鑑賞でも必ずと言っていいほど聴くのではないでしょうか。ソナタ形式を習う教材としても使われる曲だと思います。残念ながら、1楽章の冒頭「ジャジャジャジャアーン」ばかり聴かれて(1楽章はかろうじて聴いてもらえるかもしれませんが)、4楽章の最後まではなかなか聴いてもらえないかもしれません。

ベートーヴェンに限ったことではありませんが、演奏する楽譜には色々な版が存在します。版によって音が違ったり、アーティキュレーション(スラ―、スタッカート、アクセントなど)が違ったりします。色々な研究が日々行われているので、楽譜は日々進化しているといっても過言ではないでしょう。版が変わっていなくても、指揮者の判断で楽譜を変えているケースなどもありますね。例えば、カラヤンは「運命」の1楽章で、ファゴットだけが吹く旋律の部分をホルンを重ねて音に厚みを出す工夫をしています。

さて、本日の本題、「運命」の4楽章の最後の音です。手元に楽譜がないのですが、多くの指揮者が最後の音をフェルマータとして扱っています。つまり、「ジャアーン」と音を響かせて曲を終わらせています。私の所有しているCDを確認してみたところ、カラヤンベルリン・フィルをはじめとして、エーリッヒ・クライバーアムステルダムコンセルトヘボウ、カルロス・クライバーウィーン・フィルムーティフィラデルフィアはこのフェルマータパターンでした。

もうひとパターンが、基本的にフェルマータは同じなのですが、フェルマータを切って曲を締めくくる際に、ティンパニをはっきりと叩くというものです。つまり、「ジャアーン」の「ン」のところに「バン」ティンパニが鳴るんです。これを行っているのがバーンスタイン&ウィーンと朝比奈隆&大阪フィル(1992年)です。朝比奈さんのCDはこちらです。

                 

朝比奈さんは、この最後の音についてTVで語っていたことがありました。ベートーヴェンは最後の音をただのフェルマータとして書いていない。最後の小節、全員が音を鳴らした後、ティンパニだけ叩き直してフェルマータを迎えるのだと。これはベートーヴェン交響曲全曲演奏を何度も行っている朝比奈さんが毎回、色々な版を研究していたからこそ、考えた解釈なのだと思います。実際、このパターンでNHK交響楽団との演奏を行っていました。さらに、所有しているCDで確認してみたところ、1997年に録音した大阪フィルとの演奏でも行っていました。そのCDがこちら。

              

初めて聴くと、ちょっとビックリすると思います。曲が終わると思いきや、カウンターパンチを喰らったような感じになるかもしれませんね。でも、何度か聞いてみるとなんとなくしっくりくるようになると思います。

ベートーヴェン交響曲フルトヴェングラーベームカラヤンなどが演奏してきたスタイルが一般的と考えられてきました(そう思っていない人もいるとは思いますが)。なので、古楽器での演奏、ピリオド奏法を含め、違った版での演奏は当初は違和感だらけでした。この朝比奈さんの解釈も初めて披露された時は物議を醸したと思います。しかし、先入観なしに聴いてみると、実に味のある演奏だと思います。

皆さんも、何気なく聴いていた「運命」の最後の音に注意して、聴いてみて下さい。面白い発見があるかもしれませんよ♫