あっという間にゴールデンウィークも残りわずか。楽しい時はあっという間に過ぎ去るものですね。
さて、先日は久々の美術館見学に関しての記事を綴りましたが、今日は、絵画つながりで、ムソルグスキーの組曲「展覧会の絵」について語りたいと思います。
ご存知の通り、冒頭はトランペットのソロで始まります。とっても緊張するんです、最初のGの音。私はこの曲は、全曲をきちんと吹いたことはありません。(曲の最後の「キエフの大きな門」は何度も吹きました)演奏会の曲目決定の際、この曲が候補に挙がるたびに首脳陣に呼び出されて、「吹ける?」と聞かれた記憶が蘇ります。自分としてはいけそうなので「吹けます♪」と答えましたが、結局、他の楽器や予算的な部分で決定までは至らず、いまだに吹けていない曲です。プロの方でもこの冒頭はやはり嫌だと仰っていました。
ほとんどの人がラベル編曲の「展覧会の絵」を聴いているのではないかと思いますが、リムスキー・コルサコフ版もあります。冒頭はトランペットソロではなく、弦楽合奏になっていたように記憶しています(間違っていたらすみません)。ですが、やはりラベル版が安心して聴けるといいますか、自然と聴けるような気がします。
さて、私が所有しているにはカラヤンのものばかりなのですが、3つのCDのうち、2つがライヴレコーディングのものです。1つ目がこちら。
1979年の来日公演のCDです。カラヤン生誕100周年記念BOXの中の1枚が「展覧会の絵」です。巨大なホール、今は無き普門館での収録です。
もう1点が、1988年の最後の来日公演のCDです。こちらはブラームスの交響曲第1番、チャイコフスキーの交響曲第6番がそれぞれメインで、3種類のCDが発売されました(残念なことにジャケットが全て同じなんです。もう少しバリエーションを期待したんですけれど‥‥)。それがこちら。
この演奏、いわくつきなんです。冒頭のトランペット(恐らくクレッツアー氏)、ミスをして音がひっくり返ってしまったんですが、このCDは修正されています。販売されるまでは、冒頭のミスはそのままなのか巷では騒がれていましたが、撮り直したのか、その部分のみ修正したのか分かりませんが、綺麗な演奏になっています(そのままの臨場感も大切ですが、ミスを多少修正してあっても個人的にはいいと思います)。
この2枚の演奏を比較して、まずびっくりしたのが、演奏時間がほぼ一緒ということ。
1979年 1988年
プロムナード 1:50 1:50
こびと 2:48 2:49
プロムナード 1:05 1:08
古城 4:21 4:36
プロムナード 0:38 0:39
テュイルリーの庭 1:08 1:09
ビドロ 2:47 2:50
プロムナード 0:57 1:01
殻を付けた雛の踊り 1:13 1:17
サミュエル・ゴールデンベルクとシュミイレ
2:15 2:22
リモージュ 1:31 1:36
カタコンブ 2:15 2:10
死者とともに 2:23 2:15
バーバ・ヤーガの小屋 3:36 3:43
キエフの大きな門 6:30 6:27
どうです?本質的な問題ではないのですが、ライヴでほとんどテンポの違いがみられない。もちろん、タイム的には同じでも多少音楽に伸びや縮みがあるため、音楽的には違う印象を受けたり、間のとり方の違いがあったりはします。でも、本番って色々な意味でテンションが上がったり、奏者とのやりとりがあったり、様々な要素が取り込まれて一つの曲を作ることになる。それなのに、10年の隔たりがあるにもかかわらず、ライヴでほとんど同じように演奏ができるって、超人業だと思います。カラヤンがライヴの人と言われる面もありますが、冷静さを失わず曲に向き合うことのできる能力も併せ持っていることが本当によくわかりました(しかしながら、他のブラームスの交響曲、チャイコフスキーの交響曲は今までの中で遅い演奏になっているようです。そういうその時の感情やコンディションが作用するのが当たり前なのでしょう)。
解釈も大きくは変わっていないと思います。これもカラヤンによく言われることですが、若い頃から曲の解釈が固まっていて、晩年になっても同じアプローチになっている。これも凄いことだと思います(もちろん、人生、色々と経験した後半に曲へのアプローチが変わることも決して悪いことではないと思っています)。ただ、1979年の頃のほうがカラヤンサウンドが顕著かもしれません。楽器はホールが巨大でどのぐらい鳴っているのかはうまく聴きとれませんが、普門館での演奏でこのバランスで収録されていることを考えると、1本1本の楽器が物凄く鳴っているように思います。管も倍管にしているでしょう。それに、レガート奏法がかなり目立ちます。冒頭のトランペットもかなり音をつなげる感じでしかもビブラートをかけて吹いています。もしかすると1本ではなく、2本で吹いている可能性がありますね。
最後の「キエフの大きな門」で、鐘が出てくるのですが、1988年版(こちらは東京文化会館)の鐘の音がちょっと他の音と混じらずに飛び出して聴こえます。音も「カーン」と高めなのでさらに鐘だけ浮いて聴こえる気がします。それと、若干入りが早い。オケのため具合からするともうほんのちょっとだけ遅く叩いてくれた方がしっくりくるのですが、まあ、これはレコーディングしたこのCDではそう聴こえるけれども、当日の東京文化会館ではジャストタイミングで響いていたのかもしれませんね。
音の安定具合、ブレンド感でいうと、1979年版の方がいいと思います。逆にあの普門館でよくここまで合わせたな!という感じです。しかし、最後の和音が少ししょぼく聴こえてしまうので、最後の和音に関しては最後の演奏の方がいいかもしれませんね。
ここで述べたちょっとの違いはありますが、総じて、両方とも素晴らしい演奏です。多少の修正はあったにせよ、ライヴでここまできっちり演奏するベルリン・フィルもさすがです。
この2つの演奏の間にホール録音されたのがこのCD。
1986年に映像作品もあるのでそれとあわせてとったものではないでしょうか。セッションでの録音なので、バランス、技術どれをとっても完璧といってもいいのではないでしょうか。カラヤンのこの曲は少し重たいと感じていた人も、この演奏はしっくりくるような気がします。この演奏はライヴの2つに比べてほんの少しづつ速めの演奏です。とてもスタイリッシュに感じられます。冒頭は5秒ほど速いです。キエフの大きな門は約30秒速いテンポどりになっていますが、決して重さを失うことはなく、そのうえ絵を少しずつ歩きながら見ているようなそんなテンポ感のある演奏だと思います。1つの絵の前にどっしりと腰を下ろして鑑賞している雰囲気ではないかもしれません。ジャケットもカラヤンの写真が額で飾られていて、とてもおしゃれだと思います。私は色々な意味でこのCDの演奏が1番好きですね。
ということで、今回は「展覧会の絵」について語ってみました。1965年録音のものもあると思いますが、私は所有していないので、今度聴いてみようと思います。
ゴールデンウィークの絵画鑑賞は以上です♫