karajanjanの日記

カラヤンについて語りましょう

フィンランディア

シベリウスの代表作と言えば、「フィンランディア!」と答える人が多いのではないでしょうか。もちろん、交響曲やヴァイオリン協奏曲も素晴らしいですが、万人に認知されているのは、やはり「フィンランディア」なのではないかと思います。私も中学生時代、吹奏楽でこの「フィンラディア」をやってみようという話になり、シベリウスを知った次第です。

さて、この曲、それほど演奏時間が長いわけでもなく、要所要所で盛り上がり、中間部がとても綺麗、そしてクライマックスは大合奏という様々な要素から、演奏会に取り上げられる機会も多い曲ではないかと思います。私も少なくとも5回は演奏しております。

今、演奏時間が長くないと記しました。一般的には7分~8分くらいの演奏時間でしょうか。ところが、この7~8分の間でテンポが千差万別といいますか、これほどバリエーションがある短めの交響詩も珍しい気がします。

まず、冒頭。当時のフィンランドがロシアの圧政で苦しんでおり、その重苦しい雰囲気が金管楽器で奏でられます。まず、このテンポが本当に様々です。私が初めてこの曲を聴いたのは、N響アワーで放送された、ホルスト・シュタイン指揮&NHK交響楽団の演奏でした。その演奏は比較的スピーディーでした。個人的にはこのシュタインの演奏がオーソドックスなのかと思っていたら、冒頭はもっとどろどろと重々しく演奏しているものが多いようです。冒頭だけでもしかすると倍近くテンポが違うかもしれません。冒頭が遅いと、その後のトランペットの短調のファンファーレもそのまま引きずるように遅い演奏となる傾向にあるようですが、意外とここでテンポアップしていくスタイルもあるようです。

そして、ティンパニの演奏後、長調に転じた主題部に移りますが、ここのテンポ感は一定なような気がします。(もちろんものすごく速い、やや遅いはありますが)どの演奏も「まぁ、こんな感じだよね♫」といった安心感があります。ダイナミックスレンジやアクセントの付け方、歌わせ方で差は出ますが、冒頭から考えると、ここではテンポによる差というのはあまり感じないかもしれません。

その後、有名な讃美歌風の旋律に入ります。この部分に歌詞がついて歌われたりもしていますね。とてもきれいな旋律です。やはりここはテンポ設定の差が大きく出ている場所だと思います。たっぷりとゆっくり歌わせているタイプ。テンポは中庸ながら、流れを大切にするタイプ。意外や意外、テンポは速く、どんどん進んでしまうタイプ。好みが本当に分かれてくる部分だと思います。私がこの曲を最後に演奏した時は、3つ目のタイプの指揮者でした。

ラストはまた荘厳にたっぷりと歌い上げる指揮者が多いようです。ここはクライマックスということもあり、似たようなテンポ感があるようです。もちろん前に紹介したショスタコーヴィッチの革命同様、テンポを落とさずに突っ込むタイプもいますが、この曲はテンポを落とすのが普通ではないかと思います。

 

このような「フィンランディア」ですが、自分が指揮をする際に参考にしようとカラヤンベルリン・フィルを聴いて衝撃を受けたのを今でも覚えています。カラヤンの「フィンランディア」はとにかく重く、遅い!こんな重々しい解釈があるのかと本当に驚きました。でも、今ではこれが私のスタンダードになっているような気がします。

カラヤンの演奏はと言いますと、言わずもがな、冒頭は遅い。重たい(ここではいい意味で重たいんです)。その後の短調のトランペットのファンファーレ部分も遅い。中間の主題は一般的なテンポ。そして讃美歌風の旋律はとてもゆったりしたカラヤン流のレガート演奏(これを重たすぎ、もたついていると評する人もいることでしょう。それはその方の感じ方なので否定はしません)。私はとても美しいと思います。かなり遅めのテンポで、管楽器のブレスが大変だろうなぁと思いながら聴いてますが、さすがは天下のベルリン・フィルですね。造作もなく演奏している感じです。そして最後はカラヤンらしい荘厳なたっぷりとしたテンポで、ベルリン・フィルが吠えまくっています。

というわけで、カラヤンの演奏は、なんと9分30秒もかかってしまうんです。一般的な(一般的という言い方が正しいかは?ですが)演奏よりも1分以上遅いのではないかと思います。でも、シベリウスがこの曲を作曲した当時のフィンランドの雰囲気を実にうまく捉えているのではないかと思います。ちなみに私は現在2枚のカラヤンベルリン・フィルのCDを所有しています。

              

 

東芝EMI盤とドイツ・グラモフォン盤です。この2つの盤。私はあまり気に入っていないんです。私が衝撃を受けたのはカラヤンの1964年の演奏でした。(この盤は現在、実家に眠っていると思われます)この64年の演奏はイエス・キリスト教会での録音、残りの2つがベルリンホールでの録音です。場所の違いもあるとは思いますが、響きといい、勢いといい、私は64年盤が1番迫力があり、演奏の一体感もありベストかなと思っています。上記の2つの録音に関しては、トライアングルがずれていたり、ティンパニが?という部分があったりと、録音をし直すこともできたであろう箇所が散見されます。(無理に直すことはないので、全体として良し!という判断が下ったのかもしれませんね。流れも大切ですから。)響きも少し薄い気がして。他の曲でベルリンホールで録音した曲の中には響きがしっかりとしているものもあるので、ホールのせいではないと思われます。今回もこの2枚を聴き直してみましたが、やはり64年盤には及ばないかな?という印象でした。こういった曲は、カラヤンの60年代の溌剌とした勢いのある時期にぴったりだったのかもしれません。とはいえ、解釈が大きく変わっているわけでありません。若い時からすでにカラヤンの中ではこの曲のイメージが完成していたということでしょう。すごいことですね。

カラヤン盤の遅さを体験したことがなかった方は、是非聴いてみて下さい♫