karajanjanの日記

カラヤンについて語りましょう

「皇帝」

2024年がスタートしました。

本年も宜しくお願い致します。

元日から色々なことが起こっていますが、自分自身、落ちついて謙虚に過ごして行けたらと思っています。

さて、年初めに取り上げたい曲は、ベートーヴェンのピアノ協奏曲第5番「皇帝」です。この曲はメロディーがかっこよく、大好きという人が多いのではないでしょうか。2楽章はCMなどにもよく使われていて、知らず知らず耳にしている人も多いのではないかと思います。

「皇帝」という名の通り、出だしからスケールの大きな音楽が展開されますね。オーケストラの和音から始まり、それにすぐに華麗なピアノソロが続き、またオーケストラの和音。そしてまたソロと曲の展開もとても面白いと思います。ベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲でも感じるのですが、クラリネットがかなり重要な役割を持っているのではないかと思います。要所要所のここぞという所でクラリネットのソロが登場します。交響曲第5番「運命」の出だしも弦楽器とクラリネットで「ジャジャジャジャーん♪」なんです。

さて、この「皇帝」を一番最初に聴いたのは、我が家に合ったLPで、ピアノがバックハウス。演奏はクレメンス・クラウスウィーン・フィルでした。「皇帝」の代表盤とも言われている演奏かもしれませんね。しかし、それほど気に入らなかったのを覚えています。しばらく探し求めて、夢中になったのがこの演奏でした。

              

ピアノがポリーニ。演奏はベームウィーン・フィルというものです。テンポ感といい、スケールといい、高校・大学生前半まではこの演奏に大変満足していました。安定感がある演奏でもあると思います。これまであまりベームを聴いたことがなかったのですが、このCDをきっかけに、ベームの演奏もかなり聴くようになりました。今でもこの演奏は堂々としていて素晴らしいと思います。

このあと、購入した演奏がこちら、

              

カラヤンベルリン・フィルの演奏でピアノがワイセンベルクワイセンベルクカラヤンのお気に入りのピアニストの一人で、チャイコフスキーラフマニノフのピアノ協奏曲でも共演、レコーディングしています。あまり個性がなく、カラヤンの思い通りに弾いているピアニストという言われ方もされているようですが、指揮者とソリストの相性がいいということはとても大事だと思うので、お互いに演奏をしたいと思っていたのであればそれはそれでいいのではないかと思います。(ある意味、ヴァイオリニストではムターがそうかもしれませんね)この演奏は、まさに「皇帝」中の「皇帝」という演奏だと思います。ベルリン・フィルが奏でているという要因もあると思いますが、とにかく骨格が太い、しっかりとして演奏です。最初のオーケストラの響きが太くてかつ煌びやかに感じられます。テンポは比較的ゆったりしているように感じます。カラヤン交響曲は速めのテンポが多いですが、協奏曲となると比較的たっぷり目のテンポをとっていることが多い気がしますが、この「皇帝」でもそれが言えるのではないでしょうか。1・3楽章は堂々としたテンポどり。2楽章は甘美な音色で木管楽器を謳わせています。オケの歌い方にしては、ワイセンベルクのピアノはちょっとそっけない気はします。もっと甘く、あるいはゆらして弾いてもいいのではと個人的に思います。そこはポリーニの方がうまく弾いてくれているなぁと感じました。

このカラヤンの「皇帝」もなかなかいいのですが、1977年のカラヤンベルリン・フィルの日本公演(今は無き普門館で行われました)・ベートヴェンツィクルスでピアノ協奏曲の3番と5番のライヴ音源が発売されました。この演奏は生々しくて私はお気に入りです。その演奏がこちら、

              

ワイセンベルクのミスタッチも目立つのですが、それよりも強いタッチでベルリン・フィルに対抗しているその勢いが面白いなぁと感じられる演奏です。会場が普門館というばかでかい会場だったこともあり、大きな音で演奏する必要があったのかもしれませんね。オーケストラの演奏会場としては会場が大きすぎて、あまりいい場所ではなかったという評価が一般的なようです。(自分は吹奏楽コンクールで何度かあの舞台で吹きました。舞台から客席を見渡した時、やはり大きな会場だなぁと思いました)こちらの演奏の方が、ピアノとオケがお互いに戦っている感じがして躍動感があります。スタジオ録音が1972年、このライヴが1977年なのですが、ライヴ盤の方がテンポは速いようです。良い意味でスマートかつ壮大な「皇帝」になっている気がします。より活き活きとした感じを求めたい方は、このライヴ盤をお勧めします。

次に、ここ数年気に入っている演奏がこちらです。

              

ピアノがツィンマーマン。演奏はバーンスタインウィーン・フィルです。こちらは映像作品でも楽しむことができますね。非常にオーソドックスな演奏のような気がします。とはいっても、テンポは時間表示を見比べると、遅いんです。バーンスタインの晩年のテンポ感が出ているのでしょう。しかしながら、そこまで「遅い!」とは感じない演奏です。バーンスタインも意図的にテンポやダイナミックスレンジをいじろうとせず、ごくごく自然にこの曲に対峙し、そのまま表現している。それが全体としてうまくはまっているとでもいいましょうか。さらにその音楽にツィンマーマンの音色や音楽性がみごとにマッチしている。奇跡的に色々な調和がなされた演奏なのではないかと思います。このコンビで3番~5番までを収録していますが、3番に関しては解釈が合わなかったそうですが、この「皇帝」に関しては驚くほど一致していたという記事も見かけました。ですから、奇跡的な演奏が誕生してもおかしくなかったわけです。この演奏はカラヤンの煌びやかさとは違い、汗臭ささとでもいいますか、バーンスタインとツィンマーマンの動きがとても感じられる演奏だと思います。ある意味ゴツゴツした演奏かもしれませんが、ゴリゴリと雄大な音楽が刻まれていく。大木を大きなノミで削っていくような、そんなスケールの大きさを感じることができる演奏ではないかと思います。2楽章はウィーン・フィルの甘い音色が最高です。同じウィーン・フィルの演奏でも、ベーム盤よりもオケは謳っていますね。(でもピアノはポリーニの方がやはり甘く弾いているかもしれません)

というわけで、今回はピアノ協奏曲の代表作、「皇帝」を取り上げてみました。これ以外にこのCDも所有しています。

              

ポリーニアバドベルリン・フィルによる1992年・1993年に録音した全集です。ベームとの1978年の録音から15年後の再録音となります。演奏は、ポリーニと親睦の深いアバド。非常にポリーニに寄り添った丁寧な演奏です。カラヤンベルリン・フィルよりも音の勢いはないのですが、聴いていてホッとできる演奏です。個人的にはベームとの演奏の方がパワフルで好きです。

色々と綴りましたが、「皇帝」はピアノがひどくなければ、それほどテンポを気にすることなく聴けてしまう曲なのかもしれませんね。ということは、曲そのものが素晴らしいということ。改めて、ベートーヴェンの偉大さがわかりました。このような素晴らしい曲を残してくれて、ありがとうございます♫

皆さんのお気に入りの「皇帝」がありましたら、是非、教えてくださいね。