karajanjanの日記

カラヤンについて語りましょう

大好きな交響詩「ツァラトゥストラ」♬

早いものでもう師走になりましたね。しかしながら、師走らしからぬ暖かな日が続きますね。

さて、前回はネガティブなテーマで綴ってしまったので、今回は私の大好きな交響詩について語りたいと思います。

ずばり、私の大好きな交響詩は、R・シュトラウス作曲の「ツァラトゥストラはかく語りき」作品30です。この曲は、曲名を知らない人でも、「ドーソードー」の自然の動機なら知っているという人が多いのではないでしょうか。またはスタンリー・キューブリック監督の作製した映画「2001年宇宙の旅」で使われた曲と言えばわかる人が多いと思います。むしろ、本当の曲名にたどり着けていない人の方が多いかもしれないですね(笑)。

実はこの映画のサウンドトラック、カール・ベーム指揮、ベルリン・フィルとなっているようですが、実際の映画ではカラヤンウィーン・フィル(1959年)の演奏が使われているそうです。その演奏がこちら。

               

この演奏でこの曲が好きになった人も多いと思います。

この他に私はカラヤンベルリン・フィルの録音を3つ、カラヤンウィーン・フィルの録音を1つ持っていますが、今回はドイツ・グラモフォン版の2つの演奏を取り上げたいと思います。その2つがこちら。

           

前者が1973年の録音、後者が1983年録音。ちょうど10年後の録音となります。アナログ録音とデジタル録音の違いも楽しめますね。

さて、この3つの演奏の比較ですが、どれも素晴らしいんです。本当に好みの問題かなと思いますが、個人的には1973年版が一番お勧めだと思っています。

まず、「ドーソードー」と冒頭のトランペットが静かに奏でる(音は簡単なんですけど、指揮者の要求通り静かに音に変なアクセントを付けないで吹くのは、超難しいんですよ!)自然の動機。このあと、「チャンチャア~♪」と音楽が続いていくんですが、ここにカラヤンの特徴があるんです。この「チャンチャア~♪」の部分。譜面的には4拍目の16分音符+次の小節の全音符で「チャンチャア~♪」となっています。(譜面で表せないのでわかりづらくてすみません)しかしながら、この譜割でいくと、カラヤンの演奏はもしかすると正しくないのかもしれません。カラヤンは16分音符の部分を32分音符くらいに処理してるといってもいいかもしれません。なので、他の指揮者よりも16分音符は短く、「チャチャア~」と聴こえると思います。この解釈を間違いととらえている方もいるとは思いますが、この曲に限らず、音の長さやアーティキュレーションを変えることはまあまああるので、そういった意味では許容範囲かもしれません。私はむしろ、自然の動機、または日の出との称されるこの冒頭に関しては、カラヤンの演奏がベストだと思っています。太陽の動き、自然は止まることなく流れています。この譜割通りに演奏すると16分音符と全音符の間に一瞬空白ができ、音楽が止まってしまうケースをよく耳にします。ですから、16分音符ではないとしても、短めの16分音符で解釈をしているカラヤンの演奏が私には自然に聴こえるんです。

このトランペットの演奏後にティンパニが活躍しますが、ベルリン・フィル版の演奏ではカラヤンお気に入りのフォーグラー氏が叩いているそうです。1973年版の方では年代的にテーリヒェンという名ティンパニストが叩いているのかなと勝手に想像していましたが、直接この録音に立ち会ったという方が、このティンパニはフォーグラーさんが叩いていたとおっしゃってたので、その記憶が正しければ、2つとも同じティンパニストが叩いているということになりますね。(テーリヒェン氏は在団中、カラヤンと演奏解釈でかなり揉めており、1970年代後半からのカラヤンの演奏にはあまり参加していないようでした)

色々書きましたが、ウィーン・フィル版、2つのベルリン・フィル版、多少テンポの違いはありますが、演奏スタイルはほぼ一緒です。最新録音は若干トランペットを滑らかく吹かせている感じはします。1973年版はかっちりと吹かせていて、テンポもこの中では一番ゆったりしています。この序奏が1分30秒~50秒で終わるのですが、最後はパイプオルガンが荘厳に響き渡ります。ところが、ウィーン・フィル版のこの響きは非常に貧相で、なんでこんなに音が小さいの?長さも中途半端なの?と思ってしまいます。録音処理のミスなのでしょうか。ベルリン・フィル版の2つがしっかりしているだけにここはちょっと疑問です。

冒頭以降、大きな曲の流れは3つの版ともだいたい同じなのですが、決定的にテンポの違いが表れているのが、「歓喜と情熱について」という部分の演奏です。最新録音ではテンポがグッと落ちています。ホルンが細かい音符のメロディーを奏でていくのですが、旧録音の2つの版は比較的速いテンポで流れていくように演奏されるのに対して、83年の録音では一つ一つの音がはっきりと聴き取れるくらい丁寧にしかも重たく演奏している印象を受けます。まさに「情熱」度合がいい意味で増しているのかなと思います。ここもどちらのテンポがいいというわけではなく、どちらも味のある演奏だと感じました。

この曲でもう一か所ポイントになる部分と言えば、3拍子の「舞踏の歌」の部分ではないでしょうか。ここではコンサートマスターのソロがあり、コンサートマスターの音色やテクニックが楽しめる部分です。ウィーン・フィル版はかの有名なウィリー・ボスコフスキーが、1973年版はベルリン・フィルの顔とうたわれたミシェル・シュヴァルベが、1983年版はトマス・ブランディスがそれぞれ受け持っています。艶やかで味のあるソロはやはりボスコフスキーでしょうか。堅実に、ある意味パーフェクトに奏でているのはカラヤンからの信頼が絶大だったシュヴァルベでしょうか。その間がブランディスではないかと思います。普通に聴けば、ブランディスのソロもものすごく素晴らしいんです。でも前者2人と比較すると少しだけ聴きおとりするかもしれませんね。私はこの曲の持つ硬さ(「ツァラトゥストラ」は哲学者なので)から考えて、シュヴァルベさんのソロが一番合っていると思っています。

というわけで、トータルとして1973年のベルリン・フィル版が私の一押しの演奏になります。もともと、私もこの曲に強い関心を持ったきっかけが、カラヤンが亡くなった時の番組の特集で、最初に流れていたのがこの曲で、曲名が分からず、色々と調べたことでした。

今回紹介しなかった2つのCDは、ウィーン・フィルベルリン・フィルそれぞれライブ録音のものなのですが、音がそれほどいい録音ではないので、冒頭の盛り上がりがいまひとつだったり、中間部の美しさが今回紹介したものほど伝わってこないかなという印象です。しかし、ライブなのに傷が少ないのには驚きです。この曲は演奏が難しいと思うのですが、さすが世界の2トップと言われるオーケストラですね。

ライブといって、最後に紹介するのがこのDVD。以前、モーツァルトのディベルティメントの際にも紹介したライブの演奏会です。

               

前半がモーツァルトのディヴェルティメント17番、後半が「ツァラトゥストラはかく語りき」というプログラム。1987年の演奏です。カラヤンはだいぶ足腰が弱り、指揮台に行くまでにとても大変そうなのですが、この「ツァラトゥストラはかく語りき」が始まると、まるで別人のように凛と指揮台に立って(指揮台の手すりの部分にサドルが付いていて、それに実際は腰かけている感じなのですが)格好よく指揮を始めます。目は鋭く、活力が漲っていますね。この演奏、ライブであり、やはり演奏ミスがあまりなと思います。ライブでここまでほぼ完璧なのは本当に凄いと思います。視覚的な効果もあるとは思いますが、1973年版の演奏よりもこちらの演奏の方が好きかもしれません。この演奏のコンサートマスターはレオン・シュピーラー氏。この方もカラヤンから信頼されていましたね。シュピーラーさんのソロはちょっと音程が?の部分がありますが、そのマイナス面を差し引いても、この演奏は録音版よりもいいのではないでしょうか。

だいぶ長く語ってしまいましたが、私のこの曲への思いを分かって頂けたでしょうか?

おまけで、カラヤンが亡くなった後、しばらくこの曲をベルリン・フィルで録音する人はいなかったようです。ところが、1996年、ゲオルグショルティが録音しました。しかもライブレコーディング。この演奏も素晴らしいですよ。冒頭部分はどちらかというとカラヤンを意識しているのではと思わせるスタイルです。そのCDがこちら。

                

このCDの初回限定盤はピュアゴールドCD。これはそう珍しくないのですが、貴重なのは、色々な指揮者の、この「ツァラトゥストラはかく語りき」の冒頭部分だけを集めた特典シングル盤のCDが付いていること。ここにカラヤンウィーン・フィルの演奏が収録されており、「映画「2001年宇宙の旅」のオリジナル音源」とはっきりと書かれています。他にはズービン・メータ&ロスアンジェルス・フィルやアンタル・ドラティデトロイト交響楽団やウラディミール・アシュケナージクリーブランド管弦楽団の演奏などが収められています。なかなか面白いおまけですよね。でもやぱりカラヤンの演奏がいいなぁと改めて感じました。