karajanjanの日記

カラヤンについて語りましょう

シューベルト 「グレート」(ムーティ&ウィーン・フィル)

 前々回はシューベルト交響曲第9(8)番「グレート」を取り上げました。その中で私の一番のお気に入りは”ムーティウィーン・フィル”と紹介しました。そのCDがこちらです。

               

 一言でいうと、本当にオーソドックスな演奏です。テンポはややゆったり目でこれこそ雄大という表現がぴったりの演奏だと思います。全て繰り返しを行っているので60分を超える演奏となっていますが、決してだれることなく、最後まで推進力ある演奏だと思います。カラヤンの演奏には感じられなかった”タメ”が感じられ、とても立体的な仕上がりになっていると思います。1楽章のコーダは私が理想とするテンポどり、演奏されていないメロディーの鳴り方(この表現が分からなかった方は、前々回のカラヤンの「グレート」の演奏評をご覧ください)も素晴らしい!ちゃんとメロディーが鳴っていますよ。3楽章のタメも勢いがあっていいと思います。4楽章の飛び込みも、活気に満ち溢れています。いい意味で、ムーティの若さ、溌剌さが感じられます。ウィーン・フィルとの相性もばっちりと言ったところでしょうか♬

 実は、ムーティベルリン・フィルともこの「グレート」を演奏しています。この演奏はCDにはなっていないと思うのですが、衛星放送か何かで映像で放送されました。(DVDなどでは出ているかもしれません)ムーティの「グレート」だ!と期待して聴いたのですが、残念ながら、ウィーン・フィルとの演奏ほど興奮はしませんでした。アプローチとしてはそう変わらないと思うのですが、ダイナミックスレンジがちょっといじりすぎといいますか、意図的にコントロールし過ぎている印象を受けました。また、テンポもタメ過ぎたり、急に加速したりとやはりいじり過ぎている感じがします。ウィーン・フィルとの演奏は本当にすべてが自然に進んでいるように思います。この自然さがあまり評価されず、ムーティウィーン・フィルとのシューベルト交響曲全集はあまり色がなく面白みに欠けるといった評価がされているという記事も見かけましたが、私はいじり過ぎている演奏よりもいい演奏だと思います。しかし、ベルリン・フィルとの演奏ということもあり、サウンドとしてはどっしりしていて重心の低い「グレート」だと思います。これはこれで素晴らしい演奏だと思います。どちらの演奏が好きか、是非皆さんも聴き比べてみて下さい。

 もう1枚、グレートのお気に入りの演奏はカール・ベームウィーン・フィルの演奏です。これは1975年の日本公演(NHKライヴ)の演奏です。(この他にブラームス交響曲第1番、シューベルトの未完成交響曲ストラヴィンスキー火の鳥ワーグナーニュルンベルクのマイスタージンガー第一幕への前奏曲モーツァルト交響曲第41番「ジュピター」、J・シュトラウスのワルツ、ポルカなども演奏されました。)

    

               

 この演奏は、ムーティと違い、”無骨”とでも表現したらよいでしょうかね。同じウィーン・フィルなのですが、サウンドとしては綺麗と言うよりはゴツゴツした男気のある演奏(ジェンダーフリーの時代にそぐわない表現かもしれませんが、うまい言葉が見つからなかったもので、すみません)なんです。聴いた瞬間「面白い!」と思いました。雄大とか、綺麗とかそういった世界ではなく、老巨匠の「これこそが伝統的なシューベルトだ!」といわんばかりの演奏なんです。ベームのリハーサルの様子を残されている映像でみると、かなり恐ろしいんです。「○○のように演奏しろ、なんでできないんだ!」と現代ではありえない口調で自分の中にある音楽を伝えます。この演奏もベームに対する尊敬と畏怖の念を併せ持ったであろうウィーン・フィルサウンドなんだろうと思います。

 この演奏は何度も言いますが、綺麗でない、綺麗過ぎない「美」のある演奏だと思います。1楽章冒頭はベームらしくゆったりです。コーダはムーティ以上に白熱しています。演奏されていないメロディーの鳴り具合はベストだと思います。2楽章は美しいです。ウィーン・フィルの特性が存分に生かされています。3楽章のタメも十分です。4楽章はライブということもあり、ウィーン・フィルが前に行きたいと興奮気味な感じがします。それをベームが自分のテンポに抑えようとしているバトルが面白いですね。演奏が終わると爽快感が味わえました。

 というわけで、今回はウィーン・フィルと2人の指揮者の「グレート」を取り上げてみました。いかがでしたか?この他には、バーンスタインアムステルダムコンセルトヘボウの演奏もいいと思います。実は、人生最初の「グレート」との出会いはこの演奏のLPでした。

 話は変わりますが、先ほど、NHKクラシック音楽館を聴いていたら、来週はカラヤンベルリン・フィルチャイコフスキー交響曲第5番のデジタルリマスター版を放映するそうです。楽しみですね♫