karajanjanの日記

カラヤンについて語りましょう

シューベルト 「グレート」(カラヤン&ベルリン・フィル)

前回の記事で、メンデルスゾーン交響曲第2番「讃歌」はシューベルト交響曲第9(8)番「グレート」の影響を受けている!と私見を論じてみました。そこで、ここ数日、今度はその「グレート」を何種類か聴いてみました。

「グレート」とと言うと、その名の通り、長大な交響曲というイメージですよね。私も1時間もかかる凄い曲だと思っていましたが、1時間はかからないんですよね。50分くらいの曲なので(繰り返しを全部やって、ゆっくりめのテンポであれば60分くらいかもしれませんね)意外とあっさりと聴けました♬

 

 さて、私の手元にはベームカラヤンバーンスタインアバドムーティ朝比奈隆の5枚のCDがありました。今回はカラヤンバーンスタインの演奏の感想を述べてみたいと思います。

 カラヤンシューベルトに関しては、以前に少し述べたかもしれませんが、カラヤン本人が「シューベルトとの相性があまりよくない」と言っていたという記事を読んだ記憶があります。シューベルトの録音も、未完成交響曲は何度も録音していますが(生涯最後の録音となったブルックナーの7番を収録していた際に、未完成交響曲も録音予定だったようですが、ブルックナーで時間を使い過ぎて持ち越しになってしまいました)その他の曲はそう多くは演奏していませんね。交響曲全集も出していますが、決定版にはなっていないように思います。今回聴いた演奏は1960年代のベルリン・フィルとのものです。

 では、演奏はといいますと、予想外に淡白なんです。カラヤンベルリン・フィルというと絢爛豪華なゴージャスな演奏を思い描いてしまいますよね。冒頭はまさにゴージャスな感じです。ホルンの荘厳なサウンドで始まります。それに続いてオーケストラが鳴り響きます。テンポはややゆったりしているように感じます。そしてアチェルランドがかかり、テンポ、テンションともに高揚していきます。木管の3連符あたりからスピーディーな演奏になっていきます。

私の今までのこの曲の印象なのですが、第1楽章は、当然のことながら、冒頭は大事なのですが、その後の第1主題、第2主題あたりはあまり個性のある演奏と出会ったことがないんです。どの指揮者でも、どの楽団でもだいたい同じように聴こえてしまします。可もなく不可もなく聴こえるメロディーなのかもしれません。(私の耳が悪いのだと思います)ですが、1楽章最後のコーダでこの曲の良さが大きく分かれるように思います。メロディーがなくなり、伴奏だけが響く箇所があるのですが、そこで演奏されていないはずのメロディーが聴こえてくる演奏が私にとっては素晴らしい演奏だと思っています。(ベートーヴェンの田園交響曲の第5楽章でも同じように、静かな伴奏だけになった箇所でメロディーが流れてくるように聴こえる演奏ってありますよね。それと同じなんです!)残念ながらカラヤンの演奏は私にはそれが聴こえてこないんです。もしかするとこの部分のテンポが少し速いのかもしれません。さらに、一瞬、楽譜にはないある種の「ため」を作る指揮者が多いのですが、カラヤンはよく言えば楽譜通り、悪く言えば、この「ため」をあまり作らず、淡々と音楽を進めてしまいます。他の曲であれば、リタルダンドをかけて、ためを作って最後の和音に飛び込み、そして誰よりも長くその音を伸ばすカラヤンですが、この曲では全く逆で、最後の2連続の3連符もそのまま突っ込んで、和音も短めで終わり!淡白そのもの。なぜでしょうね?カラヤンらしくないとでも言いましょうか。

2楽章は、カラヤンらしく美しい緩徐楽章です。カラヤンレガートがぴったりのメランコリックなメロディーですね。オーボエのソロも美しい。その他の木管も綺麗に響いてきます。さすがベルリン・フィルです。テンポは他の指揮者よりもやや速めですが、素晴らしいサウンドだと思います♫

3楽章も早めのテンポですが、決して軽い速さではなく、ずっしりとした重心がありながら音楽が前に進んでいく感じです。ただし、この楽章も楽譜にはない「ため」があると面白い演奏になると思います。その「ため」がなくはないのですが、ちょっと物足りない気もします。

4楽章は1楽章同様、淡々と進んでいきます。この楽章はちょっと単調な部分が多く、しかもそれが繰り返されるのでうまく聴かせるのは実は難しい楽章だと思います。その点、カラヤンはそつなくこなしています。出だしはとてもパワフル。楽器の掛け合いも素晴らしいです。ですが、比較的凹凸がないといいますか、省エネで演奏しているような感じに聴こえてしまいます。カラヤンベルリン・フィルならもっと熱くシューベルトを鳴らせそうなのですが、なぜかベートーヴェンブラームス交響曲のように熱量が上がってこないんです。そしてそのまま最後の和音で終了。演奏が悪いわけではない。決してつまらないわけでもないのですが、なんだか物足りないの一言に尽きます。

 

私はラフマニノフの楽譜(スコア)を見た時に、他の作曲家の作品を見た時のように音のイメージが頭の中にうまくわかないんです。だから、ラフマニノフの作品を指揮するときはとても苦労するのだろうと思っています。(ピアノ協奏曲第2番・交響曲第2番練習指揮を務めた時にサウンドを作るのがとても大変でした)カラヤンと私を一緒にするのは大変失礼なのですが、カラヤンが自分で「シューベルトは苦手」と言っていたのはこのような、頭の中で鳴っているサウンドをオケに伝えて、それを表現する部分がうまくいかなかったのかもしれませんね。

ということで、カラヤンの「グレート」は5段階評価で3といったところでしょうか。

次回、綴ろうと思いますが、私のお気に入りの「グレート」はムーティベームです。この2枚のオーケストラがいずれもウィーン・フィルムーティベルリン・フィルと演奏したものも(録画したものは所有しています)あるのですが、やはりウィーン・フィルとの演奏の方がいいように思います。

それでは!