karajanjanの日記

カラヤンについて語りましょう

『革命』の4楽章♬

ここのところ寒かったり暑かったりと着るものに困ってしまう気候ですね。

さて、今回は、ショスタコーヴィッチの交響曲第5番「革命」について綴りたいと思います。

この「革命」は人気の高い曲ですね。プロアマ問わず、多くの演奏会で取り上げられる曲だと思います。ブームのきっかけは、30年くらい前の車のCMではなかったでしょうか。私もそのブームにあやかり、吹奏楽に編曲された第4楽章を文化祭でやった記憶があります。トランペットソロの部分も確か吹いたような‥‥。オーケストラでも演奏しました。

さて、今回は曲全体の鑑賞レポートではなく、4楽章、しかも最後の部分について語りたいと思います。

4楽章の最後の部分は大きく分けて2パターンの演奏があります。

1つ目は、テンポを落として荘厳にテーマを奏でるパターン。トランペットが「♬ラ・レミファ~」とファンファーレをたっぷり吹いた後にティンパニR・シュトラウスの「ツァラトゥストラはかく語りき」のごとく、かっこよく効果的に響き渡ります。そしてさらにテンポを落としていって、重厚に曲を終えます。

2つ目は、テンポを緩めることなくスピーディーに進むパターン。最後までほぼインテンポで突き進みます。下手をすると音楽が軽くなってしまいますが、そこは指揮者の力量でどう重みを出すかだと思います。

1つ目のパターンで演奏している代表的な演奏はエフゲニー・ムラヴィンスキー指揮、レニングラードフィルハーモニー管弦楽団です。何といっても、このムラヴィンスキーがこの「革命」の初演を行ったのですから、ある意味、この曲の模範的演奏なのかもしれませんね。この他にも小澤征爾&サイトウキネンオーケストラ、ムーティフィラデルフィア管弦楽団などもこのパターンの演奏です。小澤征爾さんの演奏は全体的に大人しい気がします。ムーティの演奏はオーソドックスかもしれません。私はやはりムラヴィンスキーの演奏が好きですね。特に好きなのはこの演奏です。1973年の来日公演のライヴレコーディングのCDです。

              

2つ目のパターンで有名なのがバーンスタイン指揮、ニューヨーク・フィルハーモニック管弦楽団の演奏です。世間ではこれも名演と言われています。バーンスタインのエネルギッシュさとこの曲の持つパワーがマッチしている感じがします。バーンスタインはものすごく遅いテンポをとって、朗々と響かせて曲を締め括るのかと思いきや、意外や意外、インテンポで突き進むタイプでした。しかし、さすがはバーンスタイン。決して曲が軽くなることはなく、パワーで押し切っていきます。爽快な演奏とでも言いましょうか。晩年、特に遅くなる傾向にあったバーンスタインですが、この曲の解釈、テンポ感はあまり変わらなかったようです。(愛弟子の佐渡裕さんはベルリン・フィルへのデビューがこの「革命」でしたが、1つ目のパターンでした。)他にも、スラットキン&セントルイス交響楽団もこのスタイルです。

私は個人的には1つ目のパターンが好きです。たっぷりとしたテンポで演奏したいと思っています。実は、テンポを遅くすればするほど重みは出るのですが、金管奏者にとっては地獄なんです。かっこよくは吹きたいのですが、最後の最後でこのテンポだと体力的にかなりつらい。さらにトランペットにとっては「ハイC」といって、とっても高い音を要求されているんです。きちんと吹ける範囲でのテンポ設定も大事になってきますね。

ショスタコーヴィッチの第5番「革命」は、私の好きなカラヤンは全く手掛けていないんです。実演も録音もありません。どこで読んだのかは忘れましたが、カラヤンが「革命」について、演奏しないのか質問され、その問いに対し、「ムラヴィンスキーが完璧に演奏しているので、私が演奏する必要がない」といったことを答えていました。カラヤンがもし「革命」を演奏していたとしたら、この答えから、きっと1つ目のパターンで演奏していたことでしょう。曲としてはカラヤンに合っている気がします。ショスタコーヴィッチの10番は録音も複数残しているのにかかわらず(ショスタコーヴィッチの前で演奏し、ショスタコーヴィッチが感動したと言われているロシア公演のCDも発売されてますね)、この5番を全く演奏しなかったということは、本当にムラヴィンスキーの演奏を評価していたのでしょう。他の曲はムラヴィンスキーが録音したり、演奏していてもカラヤンはバンバン録音してますからね)

ムラヴィンスキーのこの交響曲の演奏映像が昔テレビで放映されました。1983年の演奏です。(プログラムの前半はシューベルトの未完成交響曲です)ムラヴィンスキーは椅子に座り、スコアを譜面台に置き、演奏をしています。実に凛々しい指揮ぶりです。この時は指揮棒は持っていません。初演者であるムラヴィンスキーですから、楽譜は全て頭に入っているはずですが、しっかりとスコアを開いています。曲は物凄くエネルギッシュにしかも丁寧に作り上げられいます。ところが指揮ぶりは興奮することなく、淡々と腕を振っています。画像だけみていると「革命」を振っているとは思えないくらいです。でも演奏は凄い!レニングラード・フィルのスタミナも大したのです。確かにこの演奏を観たら、これを凌ぐ演奏はそう簡単にはできないと思うかもしれません。「英雄は英雄を知る」と言ったところでしょうかね。「革命」の最後の音が鳴り終わると、観客は大興奮です。それと正反対にムラヴィンスキーはパタンとスコアを閉じて冷静です。(フルートのトップがムラヴィンスキーの奥様だったと記憶しています)

今後、ムラヴィンスキーの「革命」を上回る演奏が出てくるか楽しみです♫

皆さんは最後のテンポ、どちらがお好みですか?