karajanjanの日記

カラヤンについて語りましょう

カラヤンのこだわり

早いもので、もう11月、霜月ですね。今日は文化の日。例年になく温かい(暑い?)休日でした。

さて、本日はカラヤンモーツァルトについて少し考えてみました。

音楽評論家の間ではカラヤンモーツァルトはあまり評価されていません。豪華すぎるとか、表面的な美にこだわりすぎるといった言葉が多く見受けられるかと思います。それはそうとして、美しいモーツァルトは個人的にいいと思います。モーツァルトの音楽は軽くて楽しいものが多いと思うのですが、そういった曲って、パーフェクトに演奏しないとひどい演奏になってしまうような気がします。とはいうものの、モーツァルトの曲を演奏するたびに思うことがあるんです。それは「練習を重ねれば重ねるだけ下手になる」ということです。「練習を重ねるんだから上手くなるに決まっている」と思われるかもしれませんが、私の私見としては、一番最初に合わせた練習での演奏が意外と面白く、うまく演奏できているケースが多いように思います。もちろん、練習を重ねているので、技術面やハーモニーの質などは上達するんです。でも演奏の活力といいますか、面白み、いきいきとした感じがなくなっていくように感じるのは私だけでしょうか?プロの演奏家の方も同じようなことをおっしゃっていたので、モーツァルトは遊び心が一番大事なのかもしれませんね。練習して必死さを出すと、楽しさが損なわれてしまう。だからこそ難しい作曲家なのかもしれません。

さて、カラヤンモーツァルトに話題を戻しましょう。カラヤンは若い頃からモーツァルトを演奏しています。公式の指揮者デビューでもモーツァルトのピアノ協奏曲を取り上げています。(オーケストラはモーツァルテウム管弦楽団)なにせモーツァルトと同じザルツブルク生まれですから、当然と言えば当然ですね。

では、交響曲の録音はというと、ほとんどがベルリン・フィルとのものです。(40番と41番は私のお気に入りのウィーン・フィルとのものがありますけど)まず、1970年代前半にEMIで録音した後期交響曲集。

               

そして、それほど年月は経過していないにもかかわらず、ドイツ・グラモフォンと録音した後期交響曲集がこちら。

               

EMI版の方が演奏会のごとく、流れを大切にして一気に録音したものと言われています。一方、ドイツ・グラモフォンの方はベルリンのホールの音響が改良され、じっくりとホールで音響を確かめながら録音した演奏と言われています。

両方とも35番「ハフナー」から41番「ジュピター」まで収録されています。(37番の交響曲はありません)CDの枚数の関係でしょうか、ドイツ・グラモフォン版にはさらに29番、32番、33番が収録されています。29番と33番は1960年代に録音されていたものをカップリングした模様です。

カラヤンはこの後も、モーツァルトの曲はオペラを含め、色々と録音していくのですが、交響曲の録音はずっと行いませんでした。デジタル録音になり、ベートーヴェンブラームスなど主要な作曲家の交響曲は再録音、再々録音しているのに、なぜかモーツァルトは行いませんでした。もしかしたら、カラヤン自身は語っていませんが、シューベルト同様、うまくいかない作曲家と思っていたのかもしれませんね。とはいえ、ディベルティメントや宗教曲はハイレベルな演奏を録音、録画していますから、なぜ交響曲だけ避けているのか疑問です。(カラヤンが亡くなった後、海賊盤ウィーン・フィル自主制作盤では41番が残されていますね)そんなカラヤンが1987年に2つの交響曲ベルリン・フィルと録音してくれました。それがこちらです。

               

カラヤンの晩年はベルリン・フィルとはいざこざがあり、ウィーン・フィルとの関係が深くなっていました。そんな時期なので、モーツァルト交響曲を再録音となれば、ウィーン・フィルと行ってもよさそうなものの、なぜかベルリン・フィルと行いました。でも、この演奏、とってもいい演奏ですよ。評論家が難癖をつけそうな豪華な演奏です。でもパーフェクトで素晴らしいんです。こんなすごいモーツァルト、生の演奏会ではもう聴けないと思いますよ。私のお気に入りのCDでもあります。このジャケットも何だかカッコよくありませんか?私は39番が好きなのですが、皆さん、気になりませんか?なぜ、カップリングが29番なのかと。この時点ではまだお亡くなりになることは意識していないかもしれませんが、年齢的にもうモーツァルト交響曲の再録音はないかも?と考えていたとしたら、この組み合わせですかね?39番はわかります。最後の3大交響曲ですから。となると、普通は40番か41番。もしかすると35番、36番、38番のどれかかもしれません。でも、「29番」って何ででしょう?

おそらく、カラヤンは29番がとっても好きなんだと思います。わざわざグラモフォンで60年代に録音していたわけですから。それと、私の手持ちのCDをあさっていたら、EMIにも60年代にこの曲を録音していました♫さらに調べたところ、1952年の演奏会からこの曲を取り上げています。そして、カラヤン最後の来日となった1988年の公演。CDとして発売されましたよね。この来日公演で演奏されたモーツァルトが、この29番と39番です。1980年代に入ってからは演奏会でも29番、39番、41番しか取り上げていませんでした。そして、最晩年の来日公演まで取り上げたのは29番と39番の2曲のみ。やはりカラヤンは29番と39番が大好きだったのでしょう。(41番はシューマン交響曲4番とカップリングでライヴ録音してあり、それがウィーン・フィルの自主制作で発売されましたが、ドイツ・グラモフォンで正規発売まで至らなかったとどこかの記事で見た記憶があります。ジュピターの編集ができないまま、カラヤンが亡くなってしまったようです。)

というわけで、最後に自分の大好きな交響曲を録音したのが最後に紹介したベルリン・フィルとのCDだったのではないかと思います。カラヤンはものすごく知名度のある曲ばかりをとりあげるのではなく、29番のような隠れた名曲も取り上げて、世界の人々に聴かせたかったのでしょう。この記事を書きながら、ちょうどこのCDを聴き終えました!