karajanjanの日記

カラヤンについて語りましょう

カラヤンと「タンホイザー序曲」

ここ数日は急に寒くなり、なかなか体がついていかないですね‥‥。

さて、本日はカラヤンと「タンホイザー序曲」について綴っていきたいと思います。

最近、ワーグナーがマイブームになっているので、このお題で書いてみることにしました。

カラヤンは「タンホイザー序曲」をベルリン・フィルと録音しています。1974年にEMIでの録音と、その10年後の1984年にドイツ・グラモフォンでの録音です。

そのCDがこちら。

        

EMIのジャケット、格好いいですよね!これを買ったときは、しばらく机の前に飾っていました。2つの録音は、ともに序曲だけではなく、序曲に続いて「ヴェーヌスベルクの音楽(バッカナール)」が続いている演奏になっています。「パリ版」と呼ばれているのではないでしょうか。曲に対するアプローチはほぼ同じような感じです。演奏時間もおおむね同じなのですが、テンポ感が少し違うように感じました。旧録音の方が前半はやや遅め、中間部は速めでとてもメリハリのある演奏になっています。一方、新録音の方は前半がやや速めで、中間部以降はそれほど速くない演奏です。悪く言えばあまり緩急の感じられない演奏かもしれません。個人的には旧録音のゆったり目のメインテーマが大好きです。荘厳な響きがしていてとてもいいと思います。新録音も悪くはないと思いますが、旧録音と比べると軽いかな?と思ってしまいます。

このパリ版と違い、序曲だけのバージョンは「ドレスデン版」と呼ばれています。ベルリン・フィルドレスデン版は持ち合わせていないのですが、「カラヤン・イン・コンサート」というDVDには収録されているようですね。(これを書きながら、少し記憶がよみがえってきました。もしかすると実家にLDがあったような‥‥)

このドレスデン版を録音したものがこちら。

             

カラヤンの晩年のザルツブルク音楽祭でのライヴ録音です。演奏はベルリン・フィルではなく、ウィーン・フィルジェシー・ノーマンとの初共演でも話題になりました。この演奏会とザルツブルク音楽祭で上演のオペラ「ドン・ジョバンニ」(モーツァルト)のリハーサルの様子やカラヤンの私生活などの記録が収められている映像作品がこちら。

                

カラヤン・イン・ザルツブルク」です。このDVD(最近BDでも再発売されましたね)、カラヤンがどうやって音楽に向き合っているかよく分かり、リハーサル風景も見られるのでとても貴重な作品だと思います。この中に「タンホイザー序曲」(ドレスデン版)のリハーサル風景が何回か登場します。天下のウィーン・フィルに向かって、「余計なアクセントが付いていて、不正確で困る」といったことを言ったり、「メロディーが聴こえてこない!明日のコンサートでも聴こえるといいのだが‥‥」などと言えてしまうのは、いかにもカラヤンらしいですよね。ちなみに、私はこの映像作品をLDでも所持していますが(こちらは持っているのをはっきり覚えています♫)、LDとDVDで翻訳がだいぶ違っているのが面白く感じました。

さあ、本題の「タンホイザー序曲」についてですが、このウィーン・フィルとの演奏はテンポ的には新録音のベルリン・フィルの演奏と似たようなテンポです。しかし、音楽的には少しゆったり聴こえます。ウィーン・フィルの持つ雰囲気も影響しているのかもしれませんね。「タンホイザー序曲」はカラヤンは得意にしている曲なのだろうと思っていたのですが、意外や意外、序曲の最後の部分。基本的に3拍子で振っていくとうまく指揮ができるのですが、最後の2音の部分だけリズムが変わります。そこでカラヤンがうまく指揮を振れずに、ウィーン・フィルの演奏が崩壊してしまいます。どこで最後の和音を出せばいいのかわからなくなってしまいました。カラヤンはやり直します。こう振るからこう演奏するんだ!とも説明します。しかしながらこの部分、そんなに難しくはないというのが私の率直な感想です。トランペットがファンファーレのように奏でるのですが、私が演奏をした時もリハーサルの時から特に事故は起こりませんでした。しかも有名な曲でもあり、ウィーン・フィルもそれなりにこなれている曲だと思われます。それなのにうまくいかないんです。初めてこの映像を観たのは高校生の時でしたが、「なんでここで事故が起きるの?」とびっくりしたのを覚えています。何度かやり直し、「最後の和音は完璧な響きでなくては!」と言って、ようやく私が聴いてもいい響きに変わったところでこの曲のリハーサルは終了となります。これだけ練習をすればさぞかし素晴らしい本番かと思いきや、この演奏会のCDを聴いてみると、最後の音はちょっと自信なさげな逃げているような響きになっているんです。本番もカラヤンの指揮とうまく合わなかったのでしょう。

たまたまうまくいかなかったのかなぁ?と思っていたのですが、カラヤンの生誕100年を記念に販売された記念BOXの中に1973年の来日の際のベルリン・フィルとのリハーサルが収められているDVDがありました。ドヴォルザーク交響曲第8番、トリスタンとイゾルデ、そしてタンホイザー序曲の様子が収められています。なぜかカラヤンも楽団員も正装をしています。ドレスリハーサルという言い方をしているようです。

                

まあ、着ているものはともかく、このリハーサルの様子もとても貴重です。マイクがついていないので、演奏を止めてカラヤンがどんな指示を出しているのかは分かりませんが、演奏に注文をつけています。ドヴォルザーク交響曲はほぼ1曲通しています。次のトリスタンとイゾルデは「前奏曲と愛の死」をかいつまんで練習しています。重たく音を出すように、ビブラートが必要以上にかからないようにといったことを言っているように感じます。そしてタンホイザーに曲は移っていきます。曲の後半を演奏し始め、いよいよ最後の部分を仕上げようと演奏が始まり、最後の2音にさしかかろうとしたまさにその時、なんと、ウィーン・フィルで起こった事故と全く同じ現象が起きているではありませんか!ここでもベルリン・フィルカラヤンの指揮と合わなくなり、崩壊してしまいました。そしてカラヤンがこう演奏するんだと説明をします。説明の後もうまくいかず、何度かやり直し、ようやく成功してこのドレスリハーサルが終了します。

このベルリン・フィルとの映像を後から観たので、ウィーン・フィルと同じ事故が起きていると思いましたが、よく考えてみると、ベルリン・フィルとの1973年の段階でうまく指揮できておらず、晩年の1987年でも同じ失敗をしていたということですね。1973年以前にも「タンホイザー序曲」を何度も演奏した記録が残っているので、カラヤンにしてもベルリン・フィルにしてもレパートリーとなっていたはずなのですが何度やってもうまくいかなかった可能性がありますね。この最後の2音はカラヤンにとって鬼門だったのかもしれません。完璧主義のカラヤンにしては珍しいことかもしれません。でも、逆に人間らしい一面を垣間見ることができたのかもしれませんね。

本日はここまで♫