karajanjanの日記

カラヤンについて語りましょう

ベートーヴェンの「田園交響曲」

今回は優しくゆったりとした曲、ベートーヴェン交響曲第6番「田園」について綴っていこうと思います。

この交響曲は普通の交響曲とは次元の違った曲だと思っています。言い方が難しいのですが、もしかすると、交響曲というジャンルには収まっていない曲なのではないか。新たなジャンルとして確立されていてもよかった曲なのではないかと感じています。交響曲の中には多くの優れたものがあると思いますが、そもそも他の交響曲と比べられないような気がしているのは私だけでしょうか?

ずばり、私の推し演奏はこちら!(以前にも少しこの演奏のことを書いたかもしれませんね。)

               

エーリッヒ・クライバーアムステルダムコンセルトヘボウの演奏です。父クライバーの方の演奏です。このLPが我が家にはあり、小さい頃にこの演奏を聴いて育ちました。私の父が「田園はこの演奏が1番」と自信を持って私に説明してくれました。他にも我が家にはワルター&コロンビア交響楽団という世間で名盤とされているLPもありました。ワルターの演奏もとてもいいと思います。しかし、私も何となくではありますが、ワルターの演奏よりも、このエーリッヒ・クライバーの演奏がいいと思いました。ワルターの演奏は現在、このCDを所有しています。

               

エーリッヒ・クライバーの演奏は、出だしですぐに引き込まれるような魅力的な演奏です。テンポはかなり速い分類に入るのではないかと思います。しかしながら、「速い!」と思わせないような演奏なんです。中身が詰まっているとでも言いましょうか。密度が高い分、音楽が横滑りにならず、このテンポでも心地よく聴けるのではないかと思います。テンポだけで比べると、カラヤンベルリン・フィルとそう変わらないのではと思いますが、カラヤンの演奏は一般的には「特急電車に乗って見ている田園風景」のように言われていますね。そこまでとは思いませんが、カラヤン好きの私も、田園に関しては少しテンポが速いかなぁと思います。そう考えると、テンポはほぼ同じでもこれだけ印象が違うというのは、本当に驚きです。一般的に田園はもう少しゆったりしたテンポで演奏されているように思います。

               

こちら、バーンスタインウィーン・フィルの演奏もなかなかいいのですが、私にはちょっと遅めに感じられます。でもこのあたりのテンポの方が皆さんの好みなのかもしれませんね。このバーンスタイン盤も評判はいいようですが、個人的にテンポをいじりすぎている気がして、本当に気分がゆったりしている時でないと、逆に落ち着かなくなってしまいます。1楽章の終わりなどはもう少し自然なリタルダントであればなぁと思っています。それに比べ、エーリッヒ・クライバー版は本当に自然といいますか、しっくりとくる演奏なんです。体の中にそのまま抵抗なく入ってくる感じがします。こういうフィーリングになることって、滅多にないのではないかと思います。もっと感情的に喜怒哀楽として伝わってくる曲は色々あると思うのですが、自然に体が受け付けるって、やはり、次元の違う曲なんだと思います。

この「田園交響曲」は出だしで80%気いるかどうかが決まってしまうのではないかと思います。(「運命」もそうかもしれませんね)私は幸か不幸か、田園を初めて聴いた演奏がこのエーリッヒ・クライバーだったので、この出だし以外はあまり受け付けなくなってしまいました。テンポは私の感覚とあまり会わないはずなのですが、意外や意外、フルトヴェングラーウィーン・フィルの演奏を最近CDで聴いて、そこそこヒットした気がしました。皆さんの想像通り、遅いんです。でもなんだか嫌な感じがしなかったので、体が受け入れているのだと思います。

もう一か所、私がこの曲の決め手になると思っているのが5楽章の中間部です。中間部で弦楽器がリズムだけを刻み、そのリズムが次第に大きな流れになっていく部分が出てきます。そのリズムの刻みの時に、演奏していないはずの5楽章の冒頭のメロディーが浮かんでくるかどうかが私にとってとても大事なんです。浮かんでくるというよりは聴こえてくる演奏でなければだめだと思っています。それを一番体験できるのが、やはりこのエーリッヒ・クライバーアムステルダムコンセルトヘボウの演奏なんです。何となくメロディーが聴こえてくる演奏はあるのですが、エーリッヒ・クライバーほどははっきりと浮かび上がってきません。もちろん、これは私の感覚での話です。皆さんが好みの田園をお聴きになった時には、その演奏でここの部分のメロディーが聴こえているかもしれません。または、ここはメロディーが聴こえてくる必要はなく、リズムが大切だと考えることもできます。解釈も色々ですから。でも、私のこだわりはここなんです。お分かりいただけますかね?

2楽章から4楽章をかなりすっ飛ばしていましたが、冒頭と5楽章の中間部。ここがこの曲の肝なんだと私は思っています。この田園を演奏したことはあるのですが、残念ながらトランペットは私の肝と思っている部分には音は無いんです。ですから、4楽章の嵐の場面で頑張って吹きました♫

さて、このエーリッヒ・クライバーの田園の影響があったかどうかは定かではありませんが、かの有名な息子のカルロス・クライバーはあまりこの交響曲を取り上げなかったそうです。しかし、カルロスの死後、テープで保管されていたライブの田園が発売されて話題になりました。そのCDがこちら。

               

カルロスの息子が田園を演奏して欲しいというリクエストに応えての演奏だったようです。発売された当初は、「天才的な演奏」、「こんな流れるような田園は今までにない」といった評が多くみられましたが、正規録音でないため、音質はあまり良くありません。私も息子クライバーは大好きですが、果たして本当にそんなに素晴らしい演奏かというと、私は?だと思っています。私にとってはただ速い方のグループに属するのではないかなと感じています。特に5楽章はそれほどメロディーが聴こえてこないんです。「カルロス・クライバー」の演奏と分からずに聴いたら、「素晴らしい!」とはならないような気がします。「カルロスの演奏だ」と分かっているので、その分、+の何かが作用してしまうかもしれませんね。

というわけで、今回はベートーヴェンの「田園」を取り上げてみました。今回取り上げなかった演奏も我が家には眠っているので、また掘り起こしてみようと思います。